行政書士試験攻略のためには絶対に落とせない科目として、民法と行政法の次に重要なのが憲法科目です。
ただし、民法科目・行政法科目で全体の半分を占める割合に対し、憲法科目は五肢択一で5問、多肢択一で1問とそれほど多くの問題が出題される訳ではありません。
だからこそ、行政書士で合格を目指すのであれば、いかに憲法科目に時間をかけずに高得点をとるための効率よい勉強方ができるかです。
そのためには、
- 判例の理解力をいかに高められるか
- 相関性の高い行政法とセットで覚える
を特に意識して勉強することです。
本記事でご紹介している憲法科目の効率的な学習法を学び、空いた時間を民法や行政法にあてることが行政書士試験の合格確率を飛躍的に高めましょう。
【0円】資料請求(無料)で貰える短期合格ノウハウ本で効率よく情報収集
~1分でカンタンに
無料資料請求できます~
行政書士の専門学校クレアールから資料請求〔無料〕すると、短期合格するためのノウハウ情報が満載な本「非常識合格法」をタダでもらえます。
第5章の過去問の活用法は社労士に合格するために知っておかないと損する重要知識ですので、資料請求【無料】して効率よく情報収集しましょう。
目次
行政書士の憲法科目の出題範囲と出題傾向
憲法科目は
- 五肢択一式が5問
- 多肢択一が1問
で出題されることが多いです。また、近年傾向として、難易度が非常に高い問題いわゆる捨て問題が1問出題されます。
冒頭にもお伝えした通り、たしかに1問でも多く正解するのは合格のために必要ですが、だからかといって満点を目指すのは間違いです。
余計な(使えない)知識の詰め込みとなり、合格者ならほぼ正解する基礎問題を取りこぼすケースにつながってしまいます。
五肢択一は3~4問、多肢択一は半数~可能な限り全問正解を目指しましょう。
行政書士の憲法科目における出題範囲
行政書士の憲法科目は補足も含め、全部で103個の条文から成り立っています。
そして憲法科目は
- 前文、三原則、憲法の保障など
- 人権:国民自身の権利や義務に関する規定。主に10条から40条
- 統治:国民を守るための機関に関する規定。主に41条から82条
の3つに出題範囲を大きく分類できます。
そのうち頻出分野は人権と統治となります。それぞれ出題傾向が異なります。
行政書士の憲法科目における出題傾向
行政書士の憲法科目における出題傾向は、
- 人権分野は判例重視
- 統治分野は条文理解や条文の知識
の2つに分けられます。
人権分野は判例重視
人権分野は
- 判例重視
の出題が多いです。
テキスト(基本書)に掲載されている判例を覚えることが基本となります。
具体的な攻略法は後ほどお伝えします。
過去問を解くと分かりますが、テキストに掲載されていない判例も普通に登場します。
ただ、テキストに載っていないからと言って、判例集などを購入して、片っ端から判例を調べて覚えようとするのはNGです。
数多くの判例を覚えれば、本試験で初めて見る判例をみる場合よりも問題は解きやすいのは間違いありません。
しかし、忙しい社会人がテキストに載っていない判例まで調べて覚えるより、行政書士試験全体の約半分を占める
の攻略に重点を置いた方が合格確率が高まります。
テキストに掲載されている判例のチェック・理解に努めましょう。
統治分野は条文理解や条文の知識
統治分野は
- 条文理解や条文の知識
を問う出題が多いため、判例問題が全く出ない訳ではありませんが
- 条文の重要箇所の暗記(特に数字など)
を徹底すべきです。
統治分野は行政法の攻略に似ています。下記記事も参考にしてください。
関連記事行政書士試験の行政法科目の攻略法
行政書士の憲法で得点をとる勉強法は判例の理解力を高める
行政書士の憲法で得点をとるための勉強法は判例の理解力を高めることです。
そのためには、
- 結論を覚える
- 結論至る理由や語句の意味を理解する
- 結論と反対の理由を覚える
- 根拠の条文チェック
- 行政法科目とセットで覚える
の5つを意識して勉強していくことです。
5つの判例の勉強法のコツを具体的に見ていきます。
結論を覚える
まずは結論(答え)を覚えることが最重要です。
なぜなら、「●●に関して、最高裁判所の判例に当てはまる(あるいは当てはまらない)ものはどれか」という判例の結論を直接問う出題形式が圧倒的に多いからです。
算数や数学を勉強するには、答えより解き方を理解しなければなりませんが、判例問題攻略はまず結論を覚えてしまうことが大事です。
結論に至る理由と語句の意味を理解する
結論を覚えた次のステップは、結論に至る理由と語句の意味の理解です。
結論だけを理解するとなると、どうしても丸暗記になってしまい、記憶力頼りの勉強方法になってしまいがちです。
そのため、結論に至る理由(や背景)と語句の意味まで理解できると本試験で結論を思い出す道しるべになります。
「●●に関して、最高裁判所の判例に当てはまるものはどれか」との問題があった場合に、「●●の問題の判例は、人権を制限する立場にある」過程を理解していれば、結論を丸暗記せずとも人権を制限する立場の選択肢を選べば正解できるようになります。
結論を覚えない限りは得点ができないため、あくまで結論を覚えることが最優先順位です。
これは多肢択一の攻略にも繋がります。
H28年度の過去問で説明
結論に至る理由と語句の意味を理解することが得点にどのように繋がるのか、平成28年問41を例にご紹介します。
平成28年問41の判例は教科書改訂の際に取り上げられる検閲問題として扱われるほど有名です。問題難易度は易(Aランク)となります。
問題41 次の文章は、最高裁判所判決の一節である。空欄 ~ に当てはまる語句 を、枠内の選択肢( 1 ~20)から選びなさい。
憲法二一条二項前段は、「検閲は、これをしてはならない。」と規定する。憲法が、 表現の自由につき、広くこれを保障する旨の一般的規定を同条一項に置きながら、別 に検閲の禁止についてかような特別の規定を設けたのは、検閲がその性質上表現の自 由に対する最も厳しい制約となるものであることにかんがみ、これについては、公共 の福祉を理由とする例外の許容(憲法一二条、一三条参照)をも認めない趣旨を明ら かにしたものと解すべきである。けだし、諸外国においても、表現を事前に規制する 検閲の制度により思想表現の自由が著しく制限されたという歴史的経験があり、ま た、わが国においても、旧憲法下における出版法(明治二六年法律第一五号)、新聞 紙法(明治四二年法律第四一号)により、文書、図画ないし新聞、雑誌等を出版直前 ないし発行時に提出させた上、その発売、頒布を禁止する権限が内務大臣に与えら れ、その運用を通じて な検閲が行われたほか、映画法(昭和一四年法律第六六 号)により映画フイルムにつき内務大臣による典型的な検閲が行われる等、思想の自 由な発表、交流が妨げられるに至つた経験を有するのであつて、憲法二一条二項前段 の規定は、これらの経験に基づいて、検閲の を宣言した趣旨と解されるのである。
そして、前記のような沿革に基づき、右の解釈を前提として考究すると、憲法二一 条二項にいう「検閲」とは、 が主体となつて、思想内容等の表現物を対象と し、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につきに、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止するこ とを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。
(最大判昭和 59 年 12 月 12 日民集 38 巻 12 号 1308 頁)
選択肢
1:行政権、2:絶対的禁止、3:例外的、4:否定的体験、5:外形的、6:原則的禁止、7:形式的、8:制限的適用、9:抜き打ち的、10:積極的廃止、11:実質的、12:個別的具体的、13:警察権、14:法律的留保的、15:国家、16:網羅的一般的、17:司法権、18:裁量的、19:公権力、20:排他的
H28年度の過去問解説
検閲の禁止に関する判例の結論は
- 検閲は絶対的に禁止される
です。
- ア:11実質的
「検閲」がどこまで踏まえるかを理解した際に、検閲は「行為が検閲ではなくても、行政機関が出版する前に内容の確認を行い、事前に出版を禁止することも含む」という検閲の言葉の意味を理解しているかどうかがポイントとなります。 - イ:2絶対禁止
判例の理解よりも憲法第21条2項からの条文「校閲は絶対的に禁止される」を覚えているかどうかがポイントとなります。 - ウ:1行政権
アと同様、検閲の言葉を理解するか、誰が行うことが検閲なのかを理解する際に、検閲は「行政機関(本問題だと内務大臣)が主体となって行うこと」のキーワードを理解しているかどうかがポイントとなります。 - エ:16網羅的一般的
ア、ウ同様に検閲の言葉を理解する際に、検閲とは特定の本などの出版物を対象とするのではなく、全ての出版物やその内容を事前に確認することであることを理解できているかがポイントです。
解答を見ると、結論だけではイの選択肢しか正答できませんよね。結論に至るまでの理由や検閲の語句の意味が問われていることがわかります。
今回の問題の場合でいくと、結論の検閲は絶対的に禁止される以外に、
- (民間機関ではなく)行政機関が主体となって行う
- 税関目的などではなく、思想統制である
- 特定の本屋出版物ではなく全ての本屋出版物を対象としている
- 公表(出版)前の事前調査である
などの結論に至る理由や語句の意味まで理解できているかどうかです。
さらに、上記5つが理解できていれば、行為の名前が「検閲」となっていなくても、アの選択肢である実質的に検閲と判断されるを導くことができます。
判例の結論は最重要ですが、結論に至るまでの理由と語句の意味を理解しているかどうかが、得点を獲得できるかどうかの分かれ目となります。
結論と反対の理由を覚える
判例の結論とその過程を覚えてしまい、まだ余裕がある人はその反対意見まで覚えられるとベストです。
特に最高裁判所の判例は、判決とは反対の考え方を述べていることがあり、その反対意見に対する考え方を問われる学説問題が出されることもあるからです。
具体的には
- 「次の1~5の内、●●の問題の判例に反する意見はどれか」
などといった問われ方をします。
ただし学説問題は減少傾向にあるため、時間に余裕のある人のみで構いません。
しかも学説問題は、判例の結論さえ覚えていればその真逆の選択肢を検討すれば問題ありません。
根拠の条文チェック
結論と反対の理由を覚えるよりも、余裕のある人は判例だけでなく、条文の理解にも時間を割くべきです。
憲法の判例は根拠となる条文が存在します。
条文は曖昧な抽象的な文章でできています。そして憲法は条文を詳しく説明した解説書の位置付けとなります。
解説書である憲法における判例攻略をするためには、
- 判例の結論
- 結論に至る理由
- 根拠となる条文
を別々に理解するのではなく1セットにして覚えると地力がついていきます。
行政法科目とセットで覚える
憲法は国民を守るための機関に関する規定であり、なおかつ日本の法律や条例などの規定の頂上に位置する日本国内の最高法規です。そのため憲法に違反する法律の制定は不可能です。
そして、行政機関について定められている行政法は憲法の統治機関が根拠となっていることから、憲法と行政法の勉強内容の相関性はとても高いため、セットで覚えると相乗効果が期待できます。
さらに、勉強内容だけでなく、条文自体や知識問題が出題される傾向も憲法と行政法は同じです。
行政法と憲法をセットで覚えることが時短にも繋がるので両科目をセットで覚えるのはメリットしかありません。
さらに、行政法で非常に使える攻略方法も転用可能です。
関連記事行政書士試験の行政法科目の攻略法
行政書士の憲法科目は過去問をしっかり勉強すれば間違いなく点数がとれる理由
憲法の判例問題は民法の判例問題のように必ずしも同じ問題・判例が出題されるとは限りません。
しかし、
- 基礎的な判例や基礎的な事柄を理解さえすれば解ける問題が多い
のが憲法科目の特徴です。
だからこそ、過去問で憲法の判例がどのように出題されているかを理解が重要です。
後は、そこで得た情報からテキストに掲載されている判例を理解すれば、憲法問題の攻略は可能です。
行政書士の憲法科目を過去問H29年でやり方を解説
行政書士の憲法科目の過去問(H29年度)で実際の問題を見ていきます。
問題 3 人権の享有主体性をめぐる最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
- わが国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼすなど、外国人の地位に照らして認めるのが相当でないと解されるものを除き、外国人にも政治活動の自由の保障が及ぶ。
- 会社は、自然人と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、または反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。
- 公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる。
- 憲法上の象徴としての天皇には民事裁判権は及ばないが、私人としての天皇については当然に民事裁判権が及ぶ。
- 憲法が保障する教育を受ける権利の背後には、子どもは、その学習要求を充足するための教育を施すことを、大人一般に対して要求する権利を有する、との観念がある。
結論
人権の判例に関する知識が網羅的に必要な問題です。
しかし、テキストを照らし合わせれば分かりますが、基本的な事柄ばかりが問われています。
- ○ Aランク(易)
「外国人においても日本の政治に影響を及ぼさない範囲で政治活動の自由は認められる」の結論さえ覚えていれば簡単です。 - ○ Aランク(易)
会社なども政治活動の自由は認められています。 - ○ Bランク(少し難)
「公務員の政治活動行為を理由に罰せられる」の結論だけを覚えていては無理です。次の結論に至る理由を理解するで詳しく解説します。 - × Bランク(普)
「天皇は民事裁判権の当事者(原告・被告)とはならない」の結論さえ覚えていれば解けます。 - ○ Bランク(普)
「子どもが学ぶ」の教育は義務ではなく権利である(大人に対して「教育を受けさせろ」と要求できる権利を持つ)の結論さえ理解できていれば解答が可能です。
選択肢3以外の4問は結論さえ覚えていれば解答できます。まずは結論を覚えることが得点にいかに直結するかが分かりますね。
結論に至る理由を理解する
選択肢3の問題の
公務員は政治的行為を制約されているが、処罰対象となり得る政治的行為は、公務員としての職務遂行の政治的中立性を害するおそれが、実質的に認められるものに限られる
ですが、公務員が政治活動を行った場合、罰せられる可能性はありますが直ちに無制限に罰せられる訳ではありません。
「国民の権利保護のために、公務の中立性を確保するために、公務員が政治活動を行うことにより、公務の中立性が実質的に損なわれる場合に限り」の限定付きです。
公務員は罰せられるという結論だけを覚えるのではなく
- 条件付きであること(今回でいえば「実質的」に中立性が損なわれる場合)
- 公務員の政治活動制限の理由が、公務の中立性の確保と国民の権利保護のため
の2点を覚えていれば、ちょっとひねった問題(結論だけでは解けない問題)や多肢択一の対策にもなります。
まとめ
民法や行政法と比較すると重要度は落ちますが、行政書士試験の合格するには憲法科目でもしっかりと得点することが必要です。
だからこそ、憲法科目でも
- 人権分野は判例問題
- 統治分野は条文問題
の分野で出題傾向が全く違うことを勉強開始前に知っておくべきです。
さらに、
- 判例問題では結論・結論に至る理由を中心に、反対意見や結論の根拠となる条文の理解
- 条文問題では、数字など細かな部分を中心に、条文そのものの理解・暗記
を意識した勉強が重要となります。
大前提として行政書士試験における憲法科目は、できるだけ手を広げずに、行政書士のテキスト(および過去問題集)を中心に勉強することです。